図書館の匂い

2009年9月18日

先日、大田区の図書館へ赴いた。

目的は一つ、歩く雑誌でおなじみの中沢健君が
絶賛する「ぼくらは海へ」という本をGET
するためだ。

ズッコケ三人組でお馴染み那須正幹先生が
書き下ろした名作。

興味のある方はぜひ読んでみて欲しい。


本当に久々の図書館。
数年前に、無職で暇なカノジョの
付き添いで何度か行った以来。

さて、図書館の何がいいって、まず回りに木があるでしょ?
あれが、いい。

本に熱中して読み進めているうちに、ふと、クビをひねらせ、
光窓の四隅に映る緑の木々が目に入ったりすると、なんだか
とってもホッとする。

ボクは映画館で、映画に夢中になっているときに、
フッと一瞬、隣の人の顔を見る癖があるけど、
あれと似たようなもんか。

どうだ!いよいよ、楽しくなるぞ!って瞬間に、
余裕の現実垣間見。

大金発見した人が、フッと後ろを振り返るのに
も似てる。


料理でいうなら、すごく美味しいステーキに
盛られた、小さなパセリのようなものなのかね、
図書館の木々は。


続いて入り口を潜り抜けると、大体、おばさんが
エプロンみたいなの着て、暇そうに座っているんだよね。
それも、いい。


どこかの街の交差点。
とおりゃんせを延々と聞きながら、ティッシュ配りする人。
ウォンウォンと、ベルトコンベア音を聞きながら、
彼岸饅頭をケースに詰める人。
流行のBGMを有線で聞きながら、ドリンク補充していたら、
突如、毎度毎度の宣伝ボイスが流れてうんざりする、
コンビニの人。


労働には音がつきものだけど、図書館の音はどんなものか。

たまに、パサッと紙をめくる音。
エアコンのかすかな機械音。
ドアの開け閉め音に、時々ハッとさせられながらも、
基本は静かで、平穏な昼下がりを過ごせるんだろうな、
図書館のおばさん。


リンリンカタカタ、リンリンリンリン!
ギーギギーっていう椅子のきしむ音。
そして、オヤジのハァックション!!
こんな音が七割を占める平凡なオフィスには
無い新鮮さなのだろうな、ライブラリー。

でも、極めつけは、やっぱ図書館の匂い。
大きな図書館にある、地下書庫なんかは、
紙とカビ臭い匂いがプンプン。
その中で、もう随分開かれていない本をあけると、
全力でモテナイ本がアプローチかけてくる。
黄ばんだヨウシと、古臭い匂いで。


ジーーッと見つめてれば、ヨウシが赤くなるって
ホントかね!?

研究熱心、調べたがりのAさん家の書斎の広辞苑
なんか、毎度毎度、風にさらされ、ブワーッとめくられ、
速読され、そして、3121ページのペーパーガール
たちは、満遍なく愛されていることに喜びを
感じているというのに。
一夫多妻の渋谷容疑者みたいに。


同じ辞書でも、図書館の書庫に眠る、
原色昆虫大百科事典ミヤマアカネトンボのページなんか、
それこそ、「開けた人が運命!」と言わんばかり。
一度開いた人は、指が硬直するとかしないとか。
当人は、ミヤマアカネさんに色眼鏡で見られていることに
気がつかないのね。
トンボの眼鏡は水色眼鏡~♪

図書館の旬は冬。
クーラーのよく効いた夏もいいけど、
暖房で少しムワっとして、セーターの
袖をチクチクさせながら、ページをめくる。

あれが、いい。


ボクは雪国で育ったせいか、紙の温度を良く覚えている。
人気のあったズッコケ三人組なんか、それこそ
返却されたばかり。
暖房と人の温みでホヤホヤなんだけど、
急いで借りて、雪の中抱えて持って返って、毛布に包まり、
寝転がって広げると、ページはいい具合にカチンコで、
冷たい銀食器みたいに、ひんやりしている。


女なんか、もう、小学生にしてアキラメの境地に
入っていたから、「1000人ギリ!」見たいにして、
あまり犯されていない、バージンブックスまで
次々と喰いまくっていたよ、当時のボクは。

たまに、本に飽きると、次々と途中で読むのをやめ、
ページ開きっぱなしの状態で、部屋に投げ出していたよ。
ヤリ逃げならぬ、読み逃げだったね。

あの頃より、めっきり図書館に行くことは減って、
エロ本ばっか見るようになってしまったけど、
たまに行くと色々感じてしまうよ。