新小岩近辺の怪しい人々
怪しい人々の巣窟は蒲田だと思っていたが、
新小岩もなかなかである。
蒲田では、右翼並みの大音量でラジオを鳴らしながら、
サイクリングする、通称ラジオ爺や、多摩川で出くわす度に、右前方10mからウィンクしてくる強面の男、通称タマゴン(多摩川の珍獣の意)を目撃してきた。
ここでは新小岩の怪しい人々を紹介しよう。
FILE1:KINTAMA仙人
主に自転車で移動する彼は、推定年齢50のオッサン。
ギョロッとした眼に黒い肌のガッチリ体系。
その昔ビデオ屋に勤めて時、10本ぐらいドーンと、
スカトロビデオを置くおっさんがいたが、氏は彼に
よく似ている。
正面から見ても、なんのことは無いが、後ろから見ると
度肝を抜かれる。
自転車の後ろには
「世の中金。OMEKO KINTAMA」
と書かれた看板がくくりつけられており、同じ文字が
Tシャツの背中にも描かれている。
OMEKO、からすると関西人か。OMEKO前線は岐阜あたりと
聞くから、それより西の地出身の人間か。
英語を使うことから、若き日は遊学した経験もあるのかも
しれない。
だが、そのわずか3行ほどの下品な言葉に、世の中の真髄
ともいうべき理念が表れており、ボクは思わず喉をうならせた。
FILE2:UB(ユービー)
ある日いつものように総武線に乗っかり、シルバーシートの
前に立っていると、うるさいおばはんがいた。
おばはんは、着物姿で塩沢ときをホッソリさせたような、
なかなかの淑女である。
おばはんの隣には、小さな女の子。女の子の隣には彼女の
祖母と思われる女性がいる。
「相続とか大変よねえ」
おばはんは、家族法と書かれた書籍を持って、なにやら難しげな言葉を一方的に、一つ挟んだ老婆にまくしたてている。
「おじさま席にすわりますかぁ??おじさまぁ」
前方2m先のおっさん連中に向かっておばはん、しゃべりかける。
恥ずかしそうにするおじさまたち。
「ふう。アタシが座っていると日本人の品格が落ちるから、ホントは座りたくないのよ」
はて??
隣の女の子は、うざったそうに、気まずい笑みを浮かべている。やがて電車は秋葉原へ到着。おばはんが席を立ち、最後にキメ台詞のようにこう言った。
「おじょうちゃん。アタシのことはUB(ゆーびー)って読んでね。」
キョトンとする少女。
「うるさい、ババアの略よ」
そう言って、UBは満面の笑みで消え去った。
爆笑した。