もみあげそば

2009年9月10日

近所に、名も無き立ち食いそば屋がある。

そう、ちょっとだけの汚れ物ならば
残さず全部出してくるような
素敵なお店。

ものの30秒で 関東風濃い口醤油五倍の、そばが出てくるが、
不思議とするりと食べられる。

とはいえ、問題点も少々

床べト。
老朽化したお水マシン(なんつーの?)
客層悪し(BECAUSE蒲田)

けど、
一番の問題は
店主のもみあげ。

長すぎる。

世界一短い詩は、蛇というタイトルで

長すぎる

の四文字だそうだが、
オレも詩を書こう

タイトル、もみあげ。

長すぎる

暫定一位タイ。(タイトル入れたら負けちゃうね)

けどね、この店主、見てるとおもろい。
口下手なのか、客に絡まれると、ややダル気味で
ふてくされるように仕込みをする姿。

仕上げにそばつゆをかける時、 クイックイとちょいナル気味に
おたまを動かす姿。 (いや、これは中村屋の天空落としより大技だよ。
小ぶりだけど)

そして、真夏の暑い時期にはほんのりと湿りかける

もみあげ≒湿度計。

けれど、けれど この店は昔から感じがいい。
80過ぎのおばあちゃんが、ほとんど毎日 一人で働いてた。

ピークの朝なんぞにいくと、おばあちゃんもうてんてこ舞。
客が食器を洗ってるシマツ。 そば屋でヒューマニズムを感じるとは。。。
哀愁漂う叙情派そば屋。

今では、すっかり、息子のモミアゲーの天下だが
それでも、おばあちゃん、休日なんぞに行くと
小さい背中を猫みたいに丸めてネギ切ってる。

息子のモミアゲーは、こんな働き者の下で すくすくと、育ち、
もみあげも、また、すくすく伸びていったのだろう。

モミアゲーに反抗期もあったかもしれない。 バイク乗り回して、将来はオートレーサーさ。
とか、 夜の校舎窓ガラス壊してまわって 将来は孤高のミュージシャンさ。 とか、
あったかもしれない。

やがて時はたち、いまじゃ蒲田のソバー
そこらじゅうで、ソバ、
出汁作ってソバー

イケメンラーメン屋店主がもてはやされる中、
モミアゲーは黙々とそばを作り続ける。

弊店間際の30分前に出される
「カレーライス終了しました」
のマジックで小さく書かれた張り紙。

ほぼ毎朝通いつめて
いつも「イカ天ソバ!」と注文すると
「イカ、もう終わちゃったんだよね」
と無愛想に言う三越前の立ち食いそば屋にはない、

腰の低さ。

屋台ラーメンが、店の目の前に出ていても
何も言わない、

寡黙さ。

店先の自販機。
ジョージアエメラルドマイルド100円。
その、

優しさ。

時代が移り変わっても
オレはこのそば屋に通い続けるだろう。