真夜中の逆走王

2009年10月11日

ゴルフでいう、ホールインワンなんて経験は日常において珍しいことではない。
桃太郎電鉄というゲームをやったことのある人ならわかるだろうが、あれは、ホールインワンだらけのゲームだ。
ようは、すごろくであり、1/6の確立で意中の目を出さねば、基本的にゴールはあり得ない。

また、フラフラと千鳥足で、ヌクヌクと暖かな電車のシートに、猫の額ほどの隙間を見つけて滑り込み、走る夜汽車は重たい頭を駆け巡り、周囲のアルコール塗れの鼻息なんぞにゃ気にならねえよと、ウトウトガタゴトしているウチに、ふと意識が戻り、気づけばジャストで最寄駅到着!なんていうことも、まあ、日常には多々あるっちゅーわけですな。

だが、そんなホールインワンなんて、つまらないお遊びにはさして興味も示さず、ゴルフでいうドラコン賞並みの、長距離打を非意図的にやってしまう真性バカがここに存在する。ましてや、ゴルフでいうと「チャーシューメン!」の声がけと共に、逆方向へフルスイングし、強烈なOBをかます男がここに存在する。

紛れも無い、小生だ。

結論から申すと、たとえば今年になって4回ほど飲んだが、
家路に帰る電車に乗った結果は以下の通りである。

①新宿発→総武線快速千葉方面乗車→0:50 高円寺着
②新宿発→総武線快速千葉方面乗車→0:50 三鷹着
③千歳烏山発→京王線各停新宿方面乗車→0:45 若葉台着
④六本木発→日比谷線東武動物公園方面乗車
 →22:50 館林着

小生のホームグラウンドは、新小岩である。
都内近郊にお住まいの方ならお気づきだろうか。

そう、酔って電車に乗るたびに、スタート地点より家から遠ざかるというミステリアスな現象が多発しているのだ。

結果論を言うと、最初っから電車に乗らずに、マン喫か、カプセルホテルでも行っていた方が得策だったわけである。
寝過ごし、品川や、御茶ノ水辺りで、白タクを捕まえること度々あったが、上述の①~③までは、明らかに逆走である。総武線なら、千葉か東京辺りで折り返し、逆方面の終点へと流れ着き、③の場合は、新宿で折り返し、駅の右へ行けば東京、左へ行けば川崎というよくわからない地、若葉台へと到着したのだろう。

そう、小生の行為は、ウノで、一人リバースカードを連発し、挙句の果てにもらわなくて良かったドローフォーを食らうようなものである。

気になるのは、④の館林である。日比谷線の終点は東武動物公園であるが、そこで乗り換えなかえればその地にたどり着くことは、まず有り得ない。そう、私は意識を無くしたまま、乗り換え、北上していたのである。

ひょっとしたら、泥酔の中、故郷札幌が恋しくなったのかもしれん。

この館林という街、名物は、つつじぐらいしか知られていない。駅のベンチで、あまり見られない女性車掌に声をかけられ起き上がってふと辺りを見渡すと、赤色ラインの電車が停車している。そして、なじみのない、こじんまりとしたホーム。 なあに、どうせ神奈川か千葉の田舎のほうにでも来たのだろうと鷹をくくっていたら、見上げた看板には恐怖の三文字が・・・

tatebayashi1.jpg

群馬県・・・。

おいおい、この地は学生時代に旅行していた時、高崎のYゼミのトイレで大をしたぐらいしか、記憶にないぞよ!と、まあ絶望的にはなったものの、どこか、遠地に来たハイな気分も加わり、駅ホームに掲げられた、館林うどんなる看板に目をやる。

tatebayashi2.jpg


せっかくここまで来たのだし、名物でも食って帰るか。
深酒残る胃袋と、冷え切った心を引っさげ、駅近くにあったうどん屋を訪れるが・・・

閉店。

時刻は22:30。所詮こんなもんだろう。そう、ここは、ボクの居場所じゃない。夢を追いかけ、遠き海外に行っても「ここは、自分の居場所じゃない・・・」などと思いつつ、現実逃避願望の誘惑からなかなか帰国できずにいる友人がいるが、ボクは、うどんが食えないという理由から、この地に見切りをつけた。

そんなこんなで、久喜というこれまた、聞きなれない場所行きの電車に乗り込む。車中、携帯紛失に気がつき、自分を呪う。やがて揺られること30分で、久喜着。ここはどこだよ?と驚きながら、JRの路線マップを見て驚いた。

tatebayashi3.jpg


全然、上じゃねえか。

もう、ボクの仕事は電車に乗ること!サタデーナイトフィーバーなんて関係ねえ!と、諦め加減で乗り込んだ湘南新宿ライン。そこで、意外にも、この列車が強烈に速いことを知る。電車から見た外の光景は、残像にしか見えない。どこまでも続くグリーン車の車両を、右往左往しているうちにあっという間に上野到着。わずか40分ほどの旅であった。

この時の心境は、ミニ四駆少年が、スパーダッシュモーターを手にした時の喜びとよく似ている。ディズニーランドでファストパスを有効利用できた時の心境にもよく似ている。

と、そんなこんなで深夜、新小岩駅に到着。

松屋の豚汁が恐ろしいほど心に染みる・・・。

寒風がヒューヒューと頬をなでる家路の中、わびしさとむなしさが募り、しばし感慨にふける。


早く、結婚したい・・・


ちなみに、携帯は東武線経由で、本日無事手元に戻りました。バッテリーは四日間のブランクにも関わらず、電池1個でかろうじて生きていました。携帯は東武動物公園駅のベンチで、40代男性の手によりハッケンされたらしい。うら若き女性との落し物を通じた恋・・・などと、漫画みたいな展開を期待していたが、現実はこんなもんだろう。
 

オッちゃん、ありがとう!