嗚呼哀愁のカンヅメよ。

2009年9月18日
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カンヅメという多彩な言葉もほかに無い。


「ホテル缶詰」なんて言うと、常人にはとても 味わえないような「センセー臭さ」が プンプンするし、僕が受験生の頃、冷房なしの小部屋 &980円のテーブルで勉強していた自分とホテル缶詰の お受験小学生を比べて、殺意を覚えた気もする。

かと思えば、金の無い大学時代に、鯖の水煮と ゼラチン塗れの秋刀魚蒲焼で一杯ひっかけた り、パインの缶詰の汁だけ飲んで、デザート 気分を味わった切ない思い出もあったりする。

腹をすかせて、友達の家に遊びに行き 「なんか食うもんある?」と冷蔵庫を開け、 フタの変わりにラップをした缶詰 しか無くて発狂寸前になった記憶もある。

今時のR25はツナ缶くらいしか重宝しないのだろうけど、 数年前どこかの学園祭
で手渡された試供品の中に、 乾パンの缶詰が入っていて、何だか哀愁感じて
しまったぞ、僕は。

さて、そんな缶詰先生に、先日偶然遭遇。

極貧ロンドン時代の親友と、もつ鍋屋へ赴いた僕。
アルコール塗れの胃壁を、鍋の汁で溶かしていた時、
メニューの表示が気になった。


「刺身、サラダ、玉子焼き、缶詰・・・」

缶詰?

こんなにまで、缶詰先生は出世されたというのか?
哀愁派缶詰代表の缶パンだって、今や路上販売で
おなじみ揚げパン一派に脅かされているというのに。
何とまあ、90年代一世を風靡した、もつ鍋屋で
この地位たるを確保しているとは。

並んでいる、缶詰もまた王道。
サバ水煮/味噌煮、イワシ味付、サンマ蒲焼、サケ照焼・・・

キャビアやホワイトアスパラガスなんて
小洒落れた横文字は無い。
唯一あったのは、西洋哀愁一派のコンビーフ君!!

昭和か・・・ここは・・・
と思いつつ、

「おちょこ二つで」

と頼んだ日本酒は
嗚呼感動の、ワンカップ大山!

さらに勢いづいて頼んだ800円のコンビーフサラダは なんと、千切りキャベツ
の上にドカンとコンビーフ君が 乗っかっている始末。

ガラクタだらけの競売物件に占有屋 が「ここは俺の城」と言わんばかりに
座り込んでいる感じか。

仕込み千切りキャベツに、乗っけるだけ。 2秒でできるお手軽メニューだ。

うちは魚が売りなんで・・・ と言う老舗割烹が、客のニーズに答えて
泣く泣くレバ刺しを出すようなものなのか。

そば屋のカレーが予想以上に急成長したような ものなのか。

いや、違う。

カテゴリ、カンヅメ。
爆笑もんだ。


だが、僕は思い出してしまったよ、
遠い記憶の懐かしさを。
心に響く多彩さを

いつだったか少し病んでいた僕は

時代遅れのスチール缶 ひ弱なアルミを蹴散らせろ!
転がりまわって 残ってみせるぜ、瓦礫の山に
歴史に名を残すぜ、I am steel!!!

なんてロックでデタラメな詩を書いたもんだが
この店の古びれた缶詰にも、同じ臭いを感じる なあ・・・

そんな余韻を感じながら箸をつけたコンビーフサラダ。
意外と美味かった。