熱い人、冷めてる人
自分は熱い人が苦手だなあと、思っていたが
最近そうでもないことがわかってきた。
小生はmixiを通じて、面白そうな方をスカウティング
して飲みにでかけているが、つまらない合コンへ
行くより100倍価値のある飲みになったりする。
昨日もまた、素敵な方と庄屋で飲んだ。
攻撃的な人生観。
おもしろいことへの貪欲さ。
大きな夢。
たこ刺しをつつきながら飲んだ熱燗は、いつもより
心に染みた。
僕が熱い人を煙たがっていたルーツはなんだったのか?
中学時代、生徒会長のNという男がいた。
貧相な顔立ちと華奢な体系からは想像もつかない
ほど熱い男で、教師を目指していた。
ホームルームか何かで
「僕たちの気持ちをわかってくれないじゃないか!先生!」
とわめき、気まずそうに教室を出る先生の背中に向かって
「それでいいのかよ!それで教師かよ!」
とアツイ言葉を浴びせかけていた。
野次馬的に面白がる級友たちの中で、僕は
「暑苦しいやつだな」 と冷め切っていた。
少し前帰省した時、久しぶりにNに会った。
昼の3時すぎ、客の姿もまばらなマクドナルドで 偶然彼の姿を目にしたのだ。
「久しぶり。何食いたい?」
ベーコンレタスバーガーをゴチッってもらいながら 話をした。
大学は教育学部に行ったものの、度重なる留年で教師の夢はあきらめ、
今は高校時代からバイトしていた マックの店長代理だという。
貧相な顔立ちは変わっていないが、昔の 暑苦しさはすっかり消えていた。
マックで働いたことがないのでわからないが、 十年にも及ぶオートマチックな
職場環境が、 彼の暑苦しさを剥ぎ取ってしまったのだろうか。
「意外とこの仕事、むいてるんだ」
そういうと、彼は颯爽と仕事に戻っていった。
カウンターに入った途端、死に掛けていた彼の目が
鋭く光ったのが印象的だった。
高校時代にも熱いヤツはいた。 なべやかん似のS。
「僕たち今年卒業だし、勉強も大変だけど文化祭も
がんばろうぜ!今しかできないんだぜ」
と歯の浮く台詞を平気で大勢に向かって叫んだりする。
集団催眠にかかったように、彼の手となり足となって 働く人々。
そしてそれを冷めた目で見つめる僕と一部の少数派。
「君たちはどうしてやる気がないの?それでいいの?」
そんなことを言われても僕は、なべやかんに似とるなあ…
と笑いをこらえるのに必死だった。
熱い人々。
つまらないオナニー映画を作り、盛大な夢をさらけ出し
「自分は映画監督になるために生まれてきた」
と語って、本気で女を口説こうとしていたH。
3次会あたりで、酒が回ると
「キギョウ!キギョー!キギョウ!」
と何かに取り付かれたように叫ぶ、ベンチャー志向のK。
ちなみに、今彼はネットワークビジネスの勧誘に励んでいる。
部屋の押入れには大量の歯磨き粉が入っていた。
「これ、地球に優しいからさ。CMとかでやってるやつは環境
破壊だよ。」
と、化学記号のいっぱい書かれたTシャツを着た彼は言う。
熱い人々。
僕が煙たがっていたのは、暑苦しい人だったのかもしれない。
熱い人には夢がある。そしてそれに向かって行動している。
楽しみながら。
何かを始めようと思っても、数ヶ月は間を置いてしまう僕は、
純粋に楽しみながら仕事にしている人が、うらやましかった
だけなのかもしれない。
熱い人への嫌悪感は、つまらない嫉妬だった。
本当に暑苦しい人は今もキライだけどね。
冷めてる人。
電車の中で奇声を発するオヤジを涼しげな目で見るOLさん。
そんな冷めた女が、ベッドの中で悶える姿を想像して
楽しんでいたりもしたが、もうそんなのには飽きた。
冷めてる人にも、そこに至ったルーツがある。
人生に飽きちゃってるのか、何も考えていないのか、
何も考えないようにしているだけなのか。
裏側に、他人にひけらかさないだけで熱いものを 込めた人もいる。
それを見つけ出すのはいかにも楽しそうだ。
僕は、今後も熱い人に会い続けるだろう。
エネルギーをいっぱいもらい、自分も さらに熱い人間になっていきたい。
季節は、夏に向かっているというのに。